前から読みたかった漫画"レイリ"
全巻一気読みしました!!!
やっぱ岩明さんの漫画は最高です。
絵は室井大資さんというお方が務めましたが戦闘シーンに迫力があり良かったです。
影武者というキャラの外見が似通う難しさがありながら上手に描き分けていたと思います。
印象に残ったシーンを中心に感想を書いていきます!
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自分以外の家族が惨さつされて以降、戦闘狂化&恩人への忠義を誓うレイリ。
まぁ幼少期に家族の生首を見て精神が崩壊しない方がおかしいと思います。首チョンパの状態で家族が夢に出てきたりと岩明さんっぽいです。
それぐらい家族があやめられた悲しみと憎しみがレイリには込められているんだという物語の導入部分です。女ながらめちゃ強いのも納得。
そんなわけで早く自分もあやめられて家族の下に行きたいという設定。主人公が早く逝きたいと考えている漫画はとても珍しいです。
☆読者側は(ちょっと不謹慎な表現ですが…)"一体どういう展開でレイリが逝くのかな"というところに興味が湧いていたと思います。
2巻p35とかでレイリが戦死しているシーンがガッツリ描かれているので、そういう最期なのかなと何となく想像していました。
結果レイリは最後まで生存し、レイリ以外の武田陣営がほぼ全員逝くという展開に。
とても意外でした。そしてお世辞にもハッピーエンドとは言えないオチが戦争の残酷さを表していてよかったです。
印象深いシーンは、影武者の1人"和助"の臨終。
セリフがおっ母…おっかぁなのがリアルです。幼い子供なので最後に母親を呼び泣き叫ぶというところが切ないです。
そして目の前の悲劇を見て信勝が絶望するところもまたリアルです。
影武者を用意している時点で誰かが亡くなる可能性は高く、それを分かっているはずなのにいざ目の前で自分の代わりに逝く姿をみれば誰だって怖気づきます。
天才信勝もまた、幼いのです。
"信長なんかに勝てるわけないだろ"
戦争の漫画は無情にも人が次々倒れていくという残酷さがあります。そして残された人々の気持ちが変わっていくというのが見どころです。
みんなの盾となるという目的は4巻で果たされますが、結局周りの人の死を受け止めるにつれやっぱ死にたくないという感情に変化します。
"あんたたちを助けるために大勢が死んだんだ!"
"生きているうちは走れ!"
は名セリフですね。丹波さまや土屋惣三の愛を受けて死にたがりでは無くなるという成長が窺えました。
正直レイリが襲われたところを惣三が助けに来たり、明智を信勝が励まし離反に繋げるといった展開はかなりご都合主義だったと思います。
ただ後者は個人的に大好きで、6巻p137~143の信勝が信玄を名乗って書いた手紙はとても素敵でした。
いかに信勝が皆から信頼される人格者だったかが分かります。
こんな手紙貰ったら嬉しくて(俺でも)本能寺の変起こしちゃうんだよなぁ
☆そして1番良かったシーンは6巻p96~
信勝が逝ったのがバレて小山田家に見捨てられる武田家の一味。
勝頼は(ヤケクソで)小山田家を威嚇したのに対し、既に信勝ではないとバレているレイリも口を開きます。
この直前に小山田家の側近にボコられているレイリは、なんと小山田家への感謝を述べます。
1巻で丹波さまに見捨てられた(といいつつ本当はレイリを危険に晒したくなかった)時もそうでしたが、レイリは人に裏切られるような罵声を浴びせられても世話になった相手に忠誠を尽くすという素晴らしい心の持ち主です。
とりわけこの感謝を述べるシーンは、人格者であった信勝がいかにも言いそうなセリフを述べています。影武者としての能力をここ一番で最大限に発揮していますね。
こんなん泣くでしょ
小山田さんも泣きそうになっているのが良いですね。信勝への無念が伝わります。
この展開が見れただけで筆者は幸せです。
そんな感じです。
筆者は日本史に詳しくないのですが、
- 武田信玄は名将
- その息子武田勝頼は無能
- 孫の武田信勝は天才
という風に本作では描かれています。
勝頼は信勝に説得され策を変えるという描写がありますが、結局この自分の意見を通せないところがリーダーとしての無能さなんだと思います。
もっとも織田に勝つのは無理ゲーだった仕方ないとも思いますが、勝頼の決断力の低さ/下手さが武田家を最後まで苦しめることになります。
ヤケクソで新府城を作ったりと迷走がすごかったです。
そんな中負けたチームで大活躍するレイリ・土屋惣三・信勝・横田さんは格好いいです。
特に土屋惣三昌恒はイケメンすぎます。
岩明さんの漫画は男性の主役キャラが本当にかっこいいです。
一方男尊女卑が徹底しているのが歴史を写す真実の鏡です。ヒストリエのエウリュディケもそうでした。
6巻p77で武士たちが女を下に見る描写とか秀逸です。
というか戦争が絡むと女に遭遇=すぐヤりたいみたいな発想になるのがリアルです。
死者の数が跳ね上がるのは戦いの勝敗が決まった後 -に代表されるように、学校の歴史の授業では見せてくてない真実がしっかりと描写されています。
日本でもつい35年ほど前までは、男性と女性を均等に雇用しようねと定められていなかったレベルなので、昔なんてもっと女性の扱いが酷かったに決まっています。
悲しい歴史ですね。
余談ですが、笑ったのは2巻p163。
影武者のレイリがドヤ顔を決めまくってて爆笑しました。もちろん初見でレイリが信勝のフリをしていたのは分かっていました。
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レイリ、最高でした。
岩明さんの漫画は全て読みたいです。